この度、事業承継に関する新法案が発表されたようで、各紙で取り上げられています。
同紙によれば、この法案は、政府が次期通常国会に提出することを目指しているそうで、オーナー企業の株式を円滑に事業承継人に相続させるために、民法の遺留分に関する規定の特例を定めることになるようです。
私は、その法案自体を見たわけではないので、その法案の詳細についてはわからないのですが、民法の遺留分の特例を設けることは、興味深いところです。
ただ、新聞で読む限りは、遺留分制度の特例といっても、遺留分を奪うものではなく、あくまで生前に相続人間の合意があることを前提に、家裁の許可がなくても遺留分放棄が可能になり、特定の相続人にオーナー会社の株式を承継させるという制度のようです。
つまり、特定の相続人である事業承継人に、オーナー会社の株式を生前贈与し、その代わりに、事業承継人たる相続人は、生前に遺留分放棄をし、その他の遺産は、事業承継人以外の相続人が相続するということになるようです。
通常の相続案件においても、遺留分の生前放棄は、放棄者に対する生前贈与とセットで行われることが多いように思います。そうであれば、被相続人である現経営者を交え、相続人間において、株式およびその他の資産の生前贈与、相続について、税制面をも加味して話し合いを行い、事業承継者への株式承継(相続または生前贈与)、事業承継者又は他の相続人による遺留分放棄を組み合わせ、事業承継対策を行うことが可能になるかもしれません。
なお、こうしたオーナー会社の株式の生前贈与をアシストする制度として、贈与株式の評価額を贈与時に固定できる制度も同時に設けられるようです。
事業承継の難しさは、様々な利害対立から、オーナー会社の株式を含む遺産について、相続人間でうまく話し合いによる分割ができないところにあるのですから、相続人間での合意の存在を前提とする上記新制度が、どの程度、事業承継を円滑にさせるものになるかは、不明です。
また、現行制度においても、家庭裁判所の許可を得れば生前放棄が可能なのであり、現行制度の違いがどの程度あるのかも、現時点では不明です。
とりあえず、制度の詳細が発表されるのを待ちたいと思います。
2007年12月4日 | 事業承継 |
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本日は、相続に伴う事業承継における、遺留分減殺請求に対する対策について説明します。
オーナー企業においては、現経営者が、後継者に対し、遺言により会社の事業用資産及び株式を相続させることが有用となりますが、これについては、これまで当ブログでも記載したとおりです。
ところが、兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を有しており(民法1028条)、例えば、現経営者である父の相続において、妻、後継者たる子、後継者ではない子がいる場合、全相続財産に対して、妻は4分の1、子はそれぞれ8分の1の遺留分を有しています。
そのため、被相続人たる現経営者の資産のうち、事業用資産及びオーナー企業の株式が大半を占めるような場合には、これら全てを後継者に相続させると、他の相続人の遺留分を侵害する場合が生じます。
上記の例において、妻や後継者でない子から遺留分減殺請求を受けた場合、後継者が相続した事業用資産及び株式等についてその価額割合に応じて減殺されることになり、結果として、事業用資産等につき、後継者である相続人とそれ以外の相続人とが当該資産を共有することになります。
これでは、折角公正証書遺言を作成して、後継者に対し事業承継をさせようとした遺言者の思惑が完全に外れてしまい、残された遺族は、遺産相続をめぐってその分割のために争うことになりかねません。
そこで、上記のようなケースにおいては、現経営者が公正証書遺言を作成するに当たって、遺留分減殺の方法を指定しておくことが好ましいといえます(民法1034条但書)。
すなわち、本当は遺留分減殺請求が起こりえないような遺言を予め作成するのが望ましいのですが、遺産の時価評価の変動により遺留分侵害が生じうるようなケースでは、遺留分減殺請求がなされた場合に備え、例えば、現金・預金から減殺し、それでも遺留分に満たない場合には事業用資産に関係のない資産について減殺する等の遺言をしておくことが望ましいといえます。
また、遺留分減殺請求を受けた受遺者たる事業承継人は、減殺を受ける限度にて、遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることも可能です(民法1041条)。
資産状況からして遺留分減殺が起こりうるような微妙なケースでは、公正証書遺言作成段階においても、入念な準備が必要です。
2007年11月12日 | 事業承継 |
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