弁護士 町田裕紀(まちだ ひろのり)

遺留分減殺請求に対する対策

 本日は、相続に伴う事業承継における、遺留分減殺請求に対する対策について説明します。

 オーナー企業においては、現経営者が、後継者に対し、遺言により会社の事業用資産及び株式を相続させることが有用となりますが、これについては、これまで当ブログでも記載したとおりです。
 ところが、兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を有しており(民法1028条)、例えば、現経営者である父の相続において、妻、後継者たる子、後継者ではない子がいる場合、全相続財産に対して、妻は4分の1、子はそれぞれ8分の1の遺留分を有しています。
 そのため、被相続人たる現経営者の資産のうち、事業用資産及びオーナー企業の株式が大半を占めるような場合には、これら全てを後継者に相続させると、他の相続人の遺留分を侵害する場合が生じます。
 上記の例において、妻や後継者でない子から遺留分減殺請求を受けた場合、後継者が相続した事業用資産及び株式等についてその価額割合に応じて減殺されることになり、結果として、事業用資産等につき、後継者である相続人とそれ以外の相続人とが当該資産を共有することになります。
 これでは、折角公正証書遺言を作成して、後継者に対し事業承継をさせようとした遺言者の思惑が完全に外れてしまい、残された遺族は、遺産相続をめぐってその分割のために争うことになりかねません。

 そこで、上記のようなケースにおいては、現経営者が公正証書遺言を作成するに当たって、遺留分減殺の方法を指定しておくことが好ましいといえます(民法1034条但書)。
 すなわち、本当は遺留分減殺請求が起こりえないような遺言を予め作成するのが望ましいのですが、遺産の時価評価の変動により遺留分侵害が生じうるようなケースでは、遺留分減殺請求がなされた場合に備え、例えば、現金・預金から減殺し、それでも遺留分に満たない場合には事業用資産に関係のない資産について減殺する等の遺言をしておくことが望ましいといえます。

 また、遺留分減殺請求を受けた受遺者たる事業承継人は、減殺を受ける限度にて、遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることも可能です(民法1041条)。

 資産状況からして遺留分減殺が起こりうるような微妙なケースでは、公正証書遺言作成段階においても、入念な準備が必要です。

トラックバック URL :

▲TOP

Copyright © 2008 Hironori Machida All Rights Reserved.